陸軍

現代電撃戦理論

 電撃戦は1930年代以降、ドイツ国防軍陸軍の主要な戦闘教義であり続けた。戦車部隊と急降下爆撃機の集中運用によって敵戦線に衝撃を与え、一点突破を試みるこの思想は、ポーランド侵攻・フランス侵攻(西方電撃戦)・ユーゴスラビア侵攻でその有効性が示され、ソビエト連邦ではトゥハチェフスキーの縦深攻撃理論に取り入れられて更なる発展を見た。ドイツにおいては、戦車の発展とともに随伴歩兵も強化され、装甲擲弾兵は歩兵戦闘車に搭乗するようになった。また、直協を担当するレシプロ急降下爆撃機は陳腐化し、ジェット機に取って代わられたほか、60年代には攻撃ヘリコプターが導入された。さらに、装甲戦闘車輌へのNBC防護能力が強化されるに従って化学兵器の野戦使用が見直され、比重1以上の大量の神経ガスを前線に投射して完全に機械化された戦車部隊を突っ込ませる戦術が生まれた。化学戦研究は特にハイドリヒ体制下で進められ、50年代には現在の電撃戦の一角を成す化学戦理論の大半が完成していたとみられる。
 現代電撃戦の仮想敵はソ連である。ソ連地上軍は多数の大隊戦術グループ(BTG)によって戦術的縦深を構築し、多段階防御を行うことをその防御戦術の特徴とする。この防衛線を突破するために必要なのは「戦力の集中」「敵に再配置の暇を与えない迅速な突破」そして「後方兵站基地の破壊」である。また、至上命題は「敵戦力の撃破」である。この目的のため、現代電撃戦は高度分散した小隊群からなる機械化連隊戦闘団とそれに付随する師団兵站部隊を多数用いて同時多発的、奇襲的に戦端を開き、化学兵器や可燃性ガスなどを用いつつ最高速度で前進して6時間程度で敵戦線を完全に瓦解させることが肝要である。
戦術マップシステム
 2010年代より配備が開始された新しいシステムである。歩兵戦闘車、戦車、高機動車などあらゆる車輛に搭載され、近隣の地形図と共に味方の展開位置や味方が視認した敵の位置、味方の砲撃や航空支援などによる被害予想半径などが全軍に共有される。通信は公開鍵暗号によって秘匿化され、解読にはスーパーコンピュータを用いても1億年かかるとされる。初期には極めて簡易的なシステムであったが、演習を繰り返すにつれて様々な問題点が露呈し、逐次修正された。
 まず、敵発見情報の明確化が課題となった。これは承認システムを導入することで解決した。戦術マップの管理は連隊戦闘団ごとに行われるが、連隊麾下の兵力が敵を発見した場合は連隊戦闘団司令部にこれを通報する。この時点で通報された敵兵力の位置はその通報時間とともに「Unbestätigt(未確認)」としてマップに自動的に登録される。状況を連隊戦闘団司令部が確認した後、現場兵力で対処不可能な敵兵力がそこに存在することが明確となれば「Bestätigt(確認済み)」として敵兵力の存在が明確化され、連隊は攻撃準備に取り掛かるとともに周辺部隊に注意喚起を促すことになる。
 次に、ジャミングによる戦術データ・リンクの妨害が容易である点が問題となった。これに対処するため、順次アンチ・ジャミング機能が追加された。これは戦術データ・リンクで使用する周波数に対して直接シーケンス・スペクトラム拡散を施すことによって秘匿性を向上させるほか、使用する電波に特定の信号(当然非公開である。どのような形態かも公表されていない)を付加してスペクトラム拡散を行う周波数帯域からその特定の信号をもたない電波を排除することによってジャミングを限りなく不可能に近づけることができるものである。
 戦術マップとそれを閲覧・操作するタブレット端末によってあらゆる戦闘行動が可能である。例えば自動化された迫撃砲兵(小隊附隊の60mm迫撃砲)は画面をタップして確認画面を処理するだけで12発の砲弾がその地点に降り注ぐし、大隊・連隊戦闘団規模には砲兵の射程距離が表示された戦術マップが用意されて砲兵部隊に対して命令を下すことができる。更にこの規模からは航空部隊に支援攻撃を画面から要請することができ、航空部隊側でも戦術マップを確認してその要求の蓋然性と緊急性を判断して支援を行うことができる。

部隊の編成

歩兵小隊
 現代ドイツにおける歩兵小隊はドイツ語でKleine-Kampfgruppe(「小戦闘団」の意)と呼ばれ、野戦における最小の戦術的戦闘単位となる。小隊は一般に本部附隊と4つの分隊で構成され、装甲擲弾兵の分隊は歩兵戦闘車に、一般歩兵の分隊はトラックやその他の機動車輌に乗車する。分隊は一般に分隊長を筆頭に軽機関銃手、無反動砲手、選抜射手と歩兵8人の計12名で構成されるが、装甲擲弾兵分隊においては軽機関銃手と選抜射手が省略される。これは、歩兵戦闘車の搭載する主砲同軸機銃と車体上部機銃がその役割を果たすためである。4つの分隊はそれぞれ相互に連携して対歩兵戦闘を遂行する。
 本部附隊は装甲擲弾兵・歩兵ともにプーマ2A11自走迫撃砲システム1輌が担当し、ここに小隊長が乗車して指揮を執る。この自走迫撃砲システムは60mm迫撃砲を連装で搭載するもので、小隊長がタブレット端末で砲撃地点を指定すれば全自動でその地点に砲弾を叩きこむ。迫撃砲は後装式のリボルバー形式であり、10秒間で6発の砲弾を発射して指定地点を効率的に破壊することが可能である。小隊長は分隊を把握して適切な直協支援を行い、野戦を有利に遂行する。
歩兵大隊
 ドイツ陸軍における歩兵大隊は、現代技術の結晶といっても過言ではない。12個の小戦闘団と12門の迫撃砲を一気に指揮し、戦闘を遂行することができるのは高度な戦術データ・リンクと位置情報システムによるもので、各部隊の位置・迫撃砲の射程・損耗の具合(これは各部隊長が報告しなければならない)などを同じディスプレイ(戦術マップ)に表示して大隊長が指揮を執る。といっても大隊長も人間であるから、個々の小隊の戦場をすべて把握してそれぞれの火力支援点をすべて決めるなどといったことは不可能である。大隊指揮の真髄は、即ち部隊の離合集散を適切に指揮することである。個々の戦場に応じてこの12個小隊を組み合わせることによって地形や陣地、敵兵力の多寡に対応した攻撃を行うことができる。
連隊戦闘団
 赤軍には大隊戦術グループ(BTG)が、アメリカ陸軍には旅団戦闘団(BCG)があるが、ドイツ陸軍でこのような「兵站結節を持たない独立した諸兵科連合の戦闘部隊」にあたるのが連隊戦闘団である。連隊戦闘団は麾下に3個歩兵大隊、2個砲兵大隊と戦車または対戦車部隊、偵察部隊、そして支援の工兵部隊を設ける。これらは戦術マップシステムを用いて指揮され、連隊戦闘団司令部は部隊の展開状況を随時把握して命令を下す。
師団以上
 基本的には高級司令部以上の機能はない。師団には多連装ロケット砲兵、軍以上になると短距離弾頭ミサイルによる対地支援が得られるが、平時編制において何らかの部隊を編合することはない。戦時になると攻撃ヘリやCOIN機、重砲兵、戦術核兵器を扱う部隊などを臨時編合して支援を行わせることがある。

空軍

電撃戦に付随する空軍理論

 ドイツ空軍(Luftwaffe)はもとより独立志向が強かったが、ヘルマン・ゲーリングがハイドリヒ時代に粛清されてからは陸軍との統合が進んだ。そのため、現在の空軍は陸軍航空隊のような扱いを受けており、海軍の母艦航空隊や哨戒機部隊などは海軍航空隊として独立している。そんな空軍がまず第一に重視することは対地直協である。即ち攻撃ヘリやCOIN機で対戦車ミサイルと小型爆弾、機関砲等による近接航空支援(CAS)を行うことが最優先である。更に爆撃任務として、後方の兵站拠点を破壊して敵の継戦能力を破壊する戦場航空阻止(BAI)を行うことも要求され、この爆撃任務と近接航空支援機の護衛の双方に任じることができるマルチロール戦闘機の開発が早くから盛んであった。
 CASにおいて空軍は主に低高度から敵機甲部隊を標的とすることが多いが、ドイツ空軍は中高度から毒ガスや可燃性ガスを散布し、敵歩兵を撃滅することも主任務の一つとしている。陸軍が敵陣地を突破し、「駆け抜ける」ことを最優先事項としているため、空軍も突撃路の啓開に重きが置かれた戦闘教義となっている。

ステルス機への対応

対航空機光学測位システム(Optisches Positionierungssystem des Flugzeugs, OPF)
 3機の準天頂衛星を用いて敵航空基地周辺の影の動きを探知し、その影を追尾することによってステルス機であっても位置の探知を行える衛星システム。測定した航空機情報からフライトレーダーで探知された民間航空機情報を差し引いたものが軍用機の運用情報となり、これに基づいて戦闘機部隊の誘導を行う。

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